コラム

予想で楽しむノーベル賞、日本人受賞者を自分で考える3つのコツ

2021年09月22日(水)16時55分

予想に役立つ指標2:2000年以降の受賞理由で傾向をつかむ

次に、2000年以降のノーベル賞受賞者と受賞理由の一覧を見て、傾向を考えてみましょう。

たとえば、生理学・医学賞は近年、「治療」や「創薬」につながる研究が受賞しやすくなっています。日本人受賞者でも、2015年の大村智氏は寄生虫感染の治療薬「イベルメクチン」、2018年の本庶佑氏は免疫阻害因子を用いたガン治療薬「ニボルマブ(商品名:オプジーボ)」の開発につながる研究で受賞しています。

とすると、ガンを狙って薬を届けるシステムの基礎を築いた前田浩氏と松村保広氏、HIV治療薬「AZT」を開発した満屋裕明氏、血中コレステロール値を低下させる「スタチン」を発見した遠藤章氏らへの注目も高いのではないかと予想できます。

物理学賞はこの10年間、宇宙・素粒子物理学と物性物理学が交互に受賞していましたが、2019年と2020年は宇宙物理学での受賞が続きました。なので、2014年の赤崎勇氏・天野浩氏・中村修二氏の「青色発光ダイオード」のように、物性物理学分野の日本人研究者への期待が高まります。

この分野では、「透明酸化物半導体」を発見して精密で消費電力の低いディスプレーを実現させた細野秀雄氏、「マルチフェロイック物質」の発見でコンピュータ・メモリの高速・大容量化に道を拓いた十倉好紀氏らが有力候補です。

また、本年9月9日に「科学界のアカデミー賞」と呼ばれる「ブレイク・スルー賞」を受賞した香取秀俊氏は、世界で最も正確な「光格子時計」を開発しました。現在、従来の「セシウム原子時計」は数千万年に1秒の誤差を生じましたが、光格子時計は300億年で1秒しかずれません。

化学賞は、生理学・医学賞や物理学賞ほどはわかりやすい法則はありません。

ただ、近年は2019年度の吉野彰氏らの「リチウムイオン二次電池」や2020年度の「ゲノム編集技術」のように、社会への影響や貢献も考慮されているようです。藤嶋昭氏の光で汚れをとる「光触媒技術」や、藤田誠氏の創薬にも応用できる「分子の自己組織化技術の開発」は、社会貢献という点でもアピール力が抜群です。

予想に役立つ指標3:ノーベル賞の登竜門とされる賞の受賞者を調べる

アメリカのアルバート・ラスカー基礎医学研究賞は、受賞者の約半数がノーベル生理学・医学賞を受賞しています。日本人では利根川進氏、山中伸弥氏がノーベル賞に先行して受賞しており、増井禎夫氏(真核生物の細胞分裂機構の解明)、森和俊氏(小胞体ストレス応答の解明)も受賞していることで、ノーベル賞受賞に期待がかかります。

イスラエルのウルフ賞の物理部門と化学部門は、しばしばノーベル賞に次ぐ権威があると言われます。物理部門では、南部陽一郎氏と小柴昌俊氏がノーベル物理学賞に先行して受賞しています。化学部門では、ノーベル化学賞受賞者の野依良治氏と前出の藤田誠氏が受賞しています。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専攻卒業。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)、獣医師。朝日新聞記者、国際馬術連盟登録獣医師などを経て、現在、立命館大学教員。サイエンス・ライティング講座などを受け持つ。文部科学省COI構造化チーム若手・共創支援グループリーダー。第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。デビュー作『馬疫』(光文社)を2021年2月に上梓。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ビジネス

来年の米成長見通しを引き下げ、ゴールドマンが変異株

ワールド

米高官「イランが譲歩撤回」と見解、核合意協議に暗雲

ワールド

インドネシアのジャワ島東部で噴火、13人死亡・90

ワールド

米ロ首脳が7日に会談、緊迫のウクライナ情勢協議へ

MAGAZINE

特集:文化大革命2.0

2021年12月 7日号(11/30発売)

習近平が主導する21世紀の共産主義回帰運動 思想統制を強め孤立主義に走る、その真意はどこに?

人気ランキング

  • 1

    「脳まで筋肉の柔道選手」と中傷された彼女が医学部合格を果たした、たった一つの理由

  • 2

    親の「赤ちゃん言葉」は幼児期の言語習得に影響する

  • 3

    大暴落の足音

  • 4

    一番人懐こいネコの品種は?甘え過ぎへの対処法は?

  • 5

    子供が欲しかった僕は、女友達と恋愛抜きで子供の「…

  • 6

    「時計の針を10年進めた」...本田圭佑がカンボジアで…

  • 7

    ついにスパイダーマンの世界に殴り込み? 『ヴェノム…

  • 8

    A・ボールドウィン誤射事件、インタビューで深まった…

  • 9

    幸せな生活を突き詰めた結果、行きついた「核シェル…

  • 10

    半身を失った「ゾンビザメ」、10匹に共食いされてな…

  • 1

    「脳まで筋肉の柔道選手」と中傷された彼女が医学部合格を果たした、たった一つの理由

  • 2

    大暴落の足音

  • 3

    半身を失った「ゾンビザメ」、10匹に共食いされてなお泳ぎ続ける:動画

  • 4

    子供が欲しかった僕は、女友達と恋愛抜きで子供の「…

  • 5

    一番人懐こいネコの品種は?甘え過ぎへの対処法は?

  • 6

    親の「赤ちゃん言葉」は幼児期の言語習得に影響する

  • 7

    「米化」でブレイク オートミールにハマった人たちに…

  • 8

    茂みから出てきた野生ゾウがサファリカーを襲う瞬間

  • 9

    ビートルズ最高の作詞家がジョンではなく、ポールで…

  • 10

    最初から「失敗」が決まっていたクロエ・ジャオ監督…

  • 1

    【動画】リビングの壁を這う「猫サイズ」のクモ

  • 2

    一番人懐こいネコの品種は?甘え過ぎへの対処法は?

  • 3

    子供が欲しかった僕は、女友達と恋愛抜きで子供の「両親」になった

  • 4

    「脳まで筋肉の柔道選手」と中傷された彼女が医学部合…

  • 5

    最初から「失敗」が決まっていたクロエ・ジャオ監督…

  • 6

    大暴落の足音

  • 7

    「米化」でブレイク オートミールにハマった人たちに…

  • 8

    半身を失った「ゾンビザメ」、10匹に共食いされてな…

  • 9

    「可愛すぎて死にそう」ウサギを真似してぴょんぴょ…

  • 10

    親の「赤ちゃん言葉」は幼児期の言語習得に影響する

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中