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下品で不快と言われても『ラストナイト・イン・ソーホー』は称賛に値する意欲作

Outgrowing London’s Past

2021年12月10日(金)15時16分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)

エロイーズ(右)はサンディを通じて1960年代のロンドンを体験する ©2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

<エドガー・ライト監督がサイコホラーに初挑戦した『ラストナイト・イン・ソーホー』はいろいろな要素を詰め込みすぎ?>

イギリスの映画監督エドガー・ライトは、犯罪アクション(『ベイビー・ドライバー』)、マーベルのスーパーヒーロー映画(『アントマン』、ただし脚本)、SFコメディー(『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』)など異なるジャンルの映画を次々と手掛けてきた。

最新作『ラストナイト・イン・ソーホー』では、初めてホラー映画に挑戦した。女性2人を主人公に据えるのも初めてだし、1960~70年代にイタリアではやった、どぎついサスペンス映画の手法「ジャッロ」を取り入れるのも初めて。毒々しい色彩と、血のりをふんだんに使ったスタイルは、犯罪と売春と精神疾患と超常現象をサイコホラーに織り込んだ本作にはぴったりだ。

ただ、その手法は、最高のときは見る者に強烈なインパクトを与えるが、下手をするとやりすぎという印象を与えかねない。ストーリーも無理なひねりが加えられたり、急にフェミニスト的になったりして、支離滅裂に感じられる。

それでも、ライトが自身最大のヒット作(筆者は最悪の作品だ思うが)『ベイビー・ドライバー』の続編的な映画ではなく、新しいジャンルに挑戦したことは称賛に値する。

夢と現実の境界が曖昧に......

物語は、ファッションデザイナーになることを夢見て、田舎町からロンドンに出てきたエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)を中心に展開する。祖母に育てられたエロイーズは、内気で神経過敏なところがあり、大昔に死んだ母親の幻影を見ることもある。それでも自作のドレスを着て、1960年代のポップスに合わせて寝室の鏡の前で口パクに興じる姿は、若者らしいほほ笑ましいシーンだ。

ところが、ロンドンでデザイン学校に入学したのはいいものの、スノッブなルームメイトにいびられて惨めな日々を送ることになる。そこで彼女は寮を出て、古ぼけた家に下宿する。何十年も模様替えをしていない薄汚い部屋だ。

大家のミス・コリンズが、若かりし頃の華やかなロンドンの話をしてくれた夜、エロイーズはその時代の夢を見る。その中で彼女は、歌手を夢見てロンドンに来たゴージャスな美女サンディ(アニャ・テイラージョイ)に出会う。

エロイーズは眠りに落ちるたびに、この時代にタイムスリップする。そしてサンディが生きる危険でグラマラスな世界にどっぷりつかり、やがて日中もその影響を受けるようになる。サンディのように髪を金髪に染めて、だんだんと夢と現実の区別がつかなくなる。

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