コラム

バイデン政権の政治任用ペースは「トランプと同じ」、問われるリーダーシップ

2021年11月01日(月)18時16分

バイデン大統領のリーダーシップへの疑問が噴出している REUTERS/Kevin Lamarque

<バイデン政権のリーダーシップが混乱している。それは政府高官人事の上院承認状況から伺い知ることができる>

8月末にバイデン政権の不支持が支持を逆転して以来、その差は徐々に拡大してきている。直接的な原因はアフガニスタンからの米軍撤退の不手際であるが、実際にはその不手際に対する批判をきっかけとして、バイデン大統領のリーダーシップへの疑問が噴出したと見ることが妥当だ。

アフガン撤退以外の支持率低下の要因の1つはインフラ投資予算を巡る混乱だ。予算は政権の意志を表すものだが、採算に渡って政治的なデッドラインが守られず、総予算額や成立の見通しも依然として不明である。なぜこのような問題が生じるのか。

それは政府の予算方針や規制改革方針を司る閣僚級ポストである行政管理予算局長が不在(上院で承認否決されたため。)であることと無関係ではない。バイデン政権は予算に関する調整責任者不在のまま巨額のインフラ投資法案を審議しており、国を預かるリーダーシップの在り方として無責任の極みのような政権運営を行っている。

バイデン大統領の政府高官人事の上院承認ペースは遅滞している

バイデン政権のリーダーシップの混乱は、政府高官人事の上院承認状況から伺い知ることができる。米国では大統領が交代する度に政府高官の大量交替が行われる。この人事慣習は回転ドア方式と呼ばれており、時の政権の政策的な意向を行政機構に反映するための重要な措置と考えられている。

政府高官人事の承認プロセスは「大統領が指名し、上院の過半数で承認する」ルールとなっている。大統領に指名された人物は、上院公聴会に出席して上院議員からの厳しい質疑応答と承認投票をクリアし、政府の責任あるポストに就任することができる。それができない場合、ポストは空席となり、次善の策として職務代行者が任命される。

しかし、ホワイトハウスと職務代行者の関係は必ずしも良いとは言えず、政権側は自らの意向を踏まえた体制変更を速やかに進めようと努力するものだ。そのため、政府高官人事の上院承認ペースを分析することを通じ、その政権運営が安定的に立ち上がっているか、様々な政策の準備が滞りなく進んでいるか、を間接的に窺い知ることができると言えよう。

近年では、トランプ前大統領は、同政権に対する共和党関係者からの反感から必要な人材を首尾よく登用することができず、大手のリベラル系メディアなどによって素人大統領政権による稚拙な政権運営の有様として度々揶揄された。実際、トランプ政権の政府高官人事の承認ペースは2000年代以降に選ばれたブッシュ・オバマ両大統領と比べて非常に遅いものであった。

しかし、実はワシントンD.Cの長年のインナーであるバイデン大統領の政府高官人事の上院承認ペースは、トランプ前大統領とほぼ変わらないほどに遅滞している。大手メディアの多くはこの事実をほとんど指摘しないため、バイデン政権の苦しい立ち上がり状況はあまり知られるところとなっていない。

Partnership for Public Serviceが提供する政府主要人事の任用情報(2021年10月31日現在)によると、上院を通過した重要人事数は166人に過ぎず、大統領指名後の上院審査中は239人でしかない。つまり、約半数の重要人事は大統領による指名すら行われていない。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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