コラム

LGBT「理解増進」法案断念──なぜ保守派はLGBTに抵抗するのか?

2021年06月01日(火)11時51分

これは何故かと言えば、彼らがおしなべて中産階級以上の準富裕家庭に育ち、ある程度の高等教育を受け、社会的な「ノイズ(不道徳)」に触れない生活を送ってきた社会階級だからである。つまりよく言えば優等生、悪く言えば温室育ちの保守派は、自らの生活やその属する社会に「あるべき日本社会のイデア」を見出し、そこから逸脱する存在は徹底的に排除するか拒絶する。この根本姿勢があるからこそ、LGBTなど性的少数者をめぐる「理解増進」法案は彼らの強い拒絶感を以て葬り去られたのである。

"社会的ノイズ"を排斥する保守派

実際、今次LGBTなど性的少数者をめぐる「理解増進」法案に反対した保守系議員は、「活動家に利用される」だとか「訴訟が乱発する」だのの理由を挙げて反対した。しかしこれは筆者からすれば額面上の理屈でしかなく、彼らの本心としては、「あるべき日本社会のイデア」が攪拌(かくはん)されることを最も恐れているのである。

彼らの反対理由は至極後付けで、結局のところ、戦時体制下に確立した"幻想"ともいえる「あるべき日本社会のイデア」という秩序が乱れることを第一に漠然と恐怖しているように思えてならない。

このような理由から日本の保守系議員がおしなべて反対する事項に、「夫婦別姓への反対」とか、「女系天皇への反対」という項目が連なる。彼らの反対事由は極めてシンプルで、日本の伝統が破壊され、"道徳秩序"や"家族の絆"が乱れるからである、というモノであるが、なまじ温室育ちの保守派は、「LGBTの権利擁護」「(選択的)夫婦別姓容認」「女系天皇容認」という、時代に即した提案に対して、進歩派やリベラルが賛成しているという理由を梃子にして断固拒絶の意思を貫いている。繰り返すように、彼らの世界観は、1930年代に確立された戦時統制期における「あるべき日本社会のイデア」と、戦後に形成された「モデル世帯」への拘泥が強すぎるからである。

保守派は、彼らとその支持者にまったく濃密に共通することだが、現状の「規律」や「秩序」の維持を最優先する。実際にその規律や秩序が、日本史の中で極めて新しい時代に形成された道徳観であるか否かは関係がない。彼らがこぞって「移民反対」を唱えるのも、この規律や秩序に、外国人という"他者"が混在することによって、それが崩壊することを恐れているからである。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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