絶対権力者となった習近平が生む「脆弱だが暴力的」な中国の危険度
中国は全ての隣国に対する一方的要求を強め、気に入らない多国間協定は欧米帝国主義の遺物として拒否し続けるだろう。
しかし、ここでも中国は時間との競争を強いられている。アメリカは中国の好戦的姿勢に対抗すべく、国防費の増額、米軍の再配置、アジア諸国との同盟関係再構築、アメリカの優位を維持するための経済的・技術的戦略を打ち出した。アジア各地では中国への反発が徐々に高まっている。
外国の挑戦と国内の摩擦に直面する全ての国家と同様、習の中国も客観的な力関係が決定的に悪化する前に、対外的な目標を達成しようとするかもしれない。従って次の10年間は特に危険な時期となる。
習と党幹部たちにとって、多くの難題を解決し、自分たちの野心を実現させる方法は、これまで以上に権力を党と指導者に集中させることだ。しかし、中央集権化で習と党は守れるかもしれないが、それによって中国はより脆弱になり、重要課題にうまく対処できなくなりつつある。習の試みが成功しようと失敗しようと、今後10年間は世界を揺るがすことになりそうだ。

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