ニュース速報

ビジネス

アングル:欧米で広がる金融商品「バズらせ」戦略、標的はZ世代

2021年08月01日(日)08時30分

 7月29日、金融とITを融合させたフィンテックの企業は、著名投資家やソーシャルメディアのインフルエンサー(影響力の強いユーザー)、派手な広告などを駆使し、オンラインの当座預金口座や融資といったサービスに華やかさを添えて、潜在顧客の注意を引こうとしている。写真はスウェーデンの後払い決済企業「クラーナ」のロゴ。2020年1月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)

[ロンドン 29日 ロイター] - かつてフランスの高級ブランド大手・LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)のデジタル戦略を担っていたイアン・ロジャーズさん。彼が今請け負っている新たな任務は、同国の暗号資産(仮想通貨)企業「レジャー」に「キラキラ感」をまとわせることだ。

「バズる」消費者ブランドへとレジャーを変身させるのがロジャーズさんの役割。そこから見えてくるのは、新興の金融企業が最新のソーシャルメディアを駆使するだけでなく、ライフスタイルブランドに近い企業幹部やマーケティング戦略を採用し始めた実態だ。

ロジャーズさんは、ヒップホップ・グループ「ビースティ・ボーイズ」のウェブサイト開発でキャリアをスタートさせ、その後、ヘッドフォンメーカー「ビーツ」の最高経営責任者(CEO)になった。

レジャーのサービスは「熟考された最良のセキュリティーを備えている」と称賛した上で「欠けているのは、ナイキやアップルの仕事かと思わせるような市場へのアプローチだ。われわれは、それをやる必要がある」と語った。

金融とITを融合させたフィンテックの企業は、著名投資家やソーシャルメディアのインフルエンサー(影響力の強いユーザー)、派手な広告などを駆使し、オンラインの当座預金口座や融資といったサービスに華やかさを添えて、潜在顧客の注意を引こうとしている。

「ナイキが新作スニーカーを発表したり、(音楽配信の)スポティファイが新サービスを始めたりすれば興味を引く。だが、わが社が新たな決済手段を追加しても、消費者にとってはつまらない」と語るのは、スウェーデンの後払い決済企業「クラーナ」のデービッド・サンドストロム最高マーケティング責任者だ。

「強力なインフルエンサーと組むことができれば、注意を引くのが非常に難しい層の関心を引きつけられる」と話す。

クラーナはこうした戦略の先駆者として名高く、つい最近はインフルエンサー・マーケティング・ソフトウエア企業のAPPRLを買収した。

また、ヒップホップのスター、スヌープ・ドッグさんを起用したキャンペーンを実施し、直近ではラッパーのエイサップ・ロッキーさんと提携した。ロッキーさんは同社の株主になったほか、「1日CEO」を務めた。

6月にユーチューブで公開された広告動画は、視聴回数が480万回に達した。紫色の室内用ガウンとスリッパという格好で街をぶらついていたロッキーさんが、クラーナのアプリが入ったスマートフォンを見つけ、それを使って服を買って「ロックダウン前」の姿を取り戻すという筋書きだ。

<無責任との批判も>

もっとも、規制の厳しい金融商品を「バズらせる」ことには問題もつきまとう。

英国の広告規制当局は昨年12月、写真投稿アプリのインスタグラムのインフルエンサーを使ったクラーナの広告活動について「今買って後払い」サービスを使うことを「無責任に」促すものだとして禁止した。

クラーナのサンドストロム氏は、金融・広告規制当局に対して商品とサービスの情報をより詳しく伝えるよう取り組んでいると述べた。

一部ソーシャルメディア企業も、自社プラットフォーム上で宣伝できる金融商品とその方法についての規約を厳格化している。

エクスペンスなどの情報管理で知られるクォルトリクスが個人金融フィンテック企業「クレジット・カルマ」の委託で実施した調査によると、1995年以降に生まれたZ世代の大半は、個人資産管理の情報を得るのにインスタグラムか短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を使っている。

TikTokのフォロワー数が1億2000万人を超える17歳の米国人インフルエンサー、チャーリー・ダメリオさんは「金融のことになると、親よりも、友達や同世代から入ってくる情報の方が受け入れやすいことがある」と言う。

ダメリオさんは十代向け銀行アプリ「ステップ」に投資し、ソーシャルメディアでお勧めしてきた。ステップには俳優ウィル・スミスさんのベンチャーキャピタル企業「ドリーマーズVC」や、音楽家のジャスティン・ティンバーレークさんらも投資している。

ステップのCJ・マクドナルドCEOは「金融サービスといえば、かつては単に給料が振り込まれて支店に引き出しに行ったり、小切手を預けたりすることを指していた。それが今では日常の一部になった。料金を支払ったり、友達からお金が振り込まれたりする。本当にライフスタイルの一部になっていて、われわれは単にそれに乗っているだけだ」と語った。

<Z世代をつかめ>

既に他の世代で市場シェアを獲得済みの大手フィンテック企業にとって、新たな広告戦略はより若い世代をつかむ手段になるかもしれない。

消費者向けの金融商品を提供する米オークランドのクレジット・カルマは、米国で20代後半から40歳ぐらいまでのミレニアル世代の2人に1人を既に顧客として獲得した。同社が今狙うのが18歳から25歳のZ世代だ。

同社はそのために音楽動画ストリーミングのVEVOと提携し、ビリー・アイリッシュさんやアリアナ・グランデさんなど、Z世代に人気のアーティストのライブで次々とスポンサー企業となった。最近ではTikTokのインフルエンサーとも組んでいる。

クレジット・カルマ幹部のプーロミ・ダマーニ氏は「ミレニアル世代で成し遂げたのと同じように、Z世代がいる場所でこの世代をつかみたい」と語った。

(Anna Irrera記者)

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

ニュース速報

ビジネス

ソフトバンクG出資の印オヨ、来週IPO申請=関係筋

ワールド

台湾のTPP申請、中国が先に加入ならリスクにさらさ

ビジネス

Wファーゴの資産規制、問題是正を確認するまで継続=

ワールド

米債務上限法案、上院で来週採決目指す=民主党

MAGAZINE

特集:予防医療の時代

2021年9月28日号(9/22発売)

病気は「治す」から「防ぐ」へ......ゲノム検診で異常検知し超極小「ナノマシン」が細胞診断する日も近い

人気ランキング

  • 1

    男性の平均寿命トップから36位へ 沖縄があっという間に「短命県」になったシンプルな理由

  • 2

    韓国の技術革新力が世界5位に──K ポップの活躍も要因。日本の順位は?

  • 3

    サイを逆さ吊りにする実験結果がイグノーベル賞を受賞

  • 4

    生放送の天気予報に堂々と映り込む犬「おやつが欲し…

  • 5

    「中国版リーマン・ショック」恒大集団の経営危機が…

  • 6

    中国版リーマン・ショック、「恒大」破綻危機で世界…

  • 7

    マスクなしでスーパーを埋め尽くす「買い物テロ」に…

  • 8

    タリバンがブラックホークを操縦する異常事態、しか…

  • 9

    ハリケーン被害:洪水で流れてきたワニに庭で食われる

  • 10

    ドイツ震撼 コンビニのバイト学生がマスク着用を注…

  • 1

    「携帯キャリアと正反対」 ネットフリックスが幽霊会員を退会させる狙いとは?

  • 2

    家族を優しく守ってくれる「吠えない」大型犬

  • 3

    男性の平均寿命トップから36位へ 沖縄があっという間に「短命県」になったシンプルな理由

  • 4

    27歳で早期リタイアできるだけの資産を形成した私の…

  • 5

    4000回の腕立て伏せを毎日、1年間続けた男...何を目…

  • 6

    ハリケーン被害:洪水で流れてきたワニに庭で食われる

  • 7

    国石「ヒスイ」が生まれる東西日本の境界を歩く

  • 8

    韓国の技術革新力が世界5位に──K ポップの活躍も要因…

  • 9

    「ただ話を聞いてくれるだけ」の存在が、脳の老化を…

  • 10

    サイを逆さ吊りにする実験結果がイグノーベル賞を受賞

  • 1

    「レオ様」激似の顔を持つ男...その数奇な運命と、たどり着いた境地

  • 2

    中国の衛星が3月に軌道上で突然分解......その理由がようやくわかった

  • 3

    来日25年のフランス人が気付いた、日本の「あり得ない」裏の顔

  • 4

    失敗学の研究者が見た、日本人の「ゼロリスク」信奉

  • 5

    タリバンがブラックホークを操縦する異常事態、しか…

  • 6

    エヴァンゲリオン、美しく静かなラスト...ファンもこ…

  • 7

    無人島にたどり着いた日本人たちがたらふく味わった「…

  • 8

    小さな子供がいる家庭にぴったり! 「優しい」性格が…

  • 9

    動画サイトの視聴で広がる集団疾患、世界の若年層で…

  • 10

    330匹の猫が不審死...原因はペットフードか 重症猫…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中