ニュース速報

ワールド

焦点:英コロナ対策、規制緩和と追加ワクチン依存政策に懸念の声

2021年09月18日(土)09時00分

 9月15日、ジョンソン英首相は新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を進めることで、ロックダウン(都市封鎖)を再導入することなく、この冬を乗り切りたいと考えている。ロンドンで14日、代表撮影(2021年 ロイター)

[ロンドン 15日 ロイター] - ジョンソン英首相は新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を進めることで、ロックダウン(都市封鎖)を再導入することなく、この冬を乗り切りたいと考えている。しかし、医師や科学者は追加接種頼みで他の対策を取らなければ、病院は持ちこたえられなくなると警告する。

英国は、人口当たりの新型コロナ死者数が世界最大級。パンデミックによる景気の落ち込みは先進国で最も深刻な国の1つとなっているが、一方でワクチン接種率は世界トップクラスだ。

ジョンソン氏が14日発表した新たなコロナ対策は、成功を収めているワクチン接種が柱となっている。50歳以上や医療従事者などを対象にした3回目接種や、子どもへの1回目接種の開始、感染経路把握や隔離などの体制整備が盛り込まれ、冬場のロックダウン回避を目指している。

当局者の話では、マスク着用の義務化、大規模イベントでのワクチン接種証明の提示義務化、在宅勤務の要請など緊急対応策となる「プランB」については、データが医療体制のひっ迫を示した場合にのみ導入する方針だ。

だが、多くの医師は、既に負担が重過ぎると感じている。医師会幹部は、「緩やかな規制」を今導入しなければ、後になってより「厳しい規制」が必要になるだろうと懸念を示し、昨年のロックダウンは導入が遅れて延長を余儀なくされたと指摘した。

英国医師会(BMA)のチャーンド・ナグポール会長は「病院やかかりつけ医師は、すでに手一杯の状態。感染率は高く、この冬に医療サービスを維持するには、追加的な感染抑止策が不可欠だ」と訴える。

ジャビド保健相は規制強化を見送った理由について、3回目接種や子どもへの接種などワクチン接種が最重要の感染予防策だと、スカイニュースの取材で主張。

「判断は常にリスクを伴うが、今回発表したプランはよく練り上げられていると思う」と言い切った。

ただ、ジョンソン氏は1年前にも今回と同様に追加的なロックダウン導入を見送った後、感染拡大と入院者数の増加により、結局、イングランドで2回目、3回目のロックダウン導入を余儀なくされている。

英国は現在、感染力の強いデルタ株によって1日当たりの平均新規感染者数が3万人余りと、米国に次いで多い。

ジョンソン氏は、ワクチンによって感染者数が増えても死者数の増加は抑えられていると唱え、ワクチンがなければ7月にイングランド経済を再開することはできなかっただろうと強調してきた。イングランド以外の地域では、独自に医療ルールを定めている。

英国は、16歳以上で接種を完了した人の比率が81.3%に達する一方、入院者数は8340人と、1年前の1066人から大幅に増えた。

政府のアドバイザーによると、人出が増えると入院者数はさらに増加する可能性があり、公表された予測には10月中旬までに1日当たり入院者数が6000人を超えるとのシナリオも含まれている。

対策の導入が早ければ早いほど感染率が低く保たれ、より厳しい対策が必要になるリスクが減る、というのがアドバイザーの意見だ。

<これから数カ月がヤマ場>

感染症モデリング団体の会長を務めるグラハム・メドレー氏は、7月にロックダウン政策の大半が解除されて以降、人の動きはそれほど増えておらず、今年初めよりも見通しは改善していると述べた。

ただ、今後数カ月間に人々が慎重さを欠くようになれば「感染率が大幅に上昇することも十分に考えられる」とくぎを刺した。

政府の医療アドバイザーや医師は、1年半に及ぶパンデミックで疲弊した医療・介護セクターにとって、この数カ月間がヤマ場だと警鐘を鳴らしている。その理由の1つが、インフルエンザなど他の季節性疾患の冬場の感染拡大だ。

インペリアル・カレッジ・ロンドンのジャミール研究所副所長、カタリーナ・ハウク氏も、インフルエンザ流行シーズンに強い危惧を抱いている。

フランスとイタリアは特定の場所への入場に免疫パスの提示を求め、さらに両国とドイツは、何らかの形でマスクの着用を義務付けている。

ハウク氏はロイターの取材に対し、冬に向かって人々が室内で過ごす時間が増える中で、このような対策は「当然だ」だと説明した。

スコットランドは、イングランドよりも数週間早く8月に学校再開した時点で感染者数が急増した。だが、現在は減少に転じている。

スコットランドは公共交通機関、店舗、レストラン、その他の公共施設でマスクの着用が義務化されており、10月からはナイトクラブなど人が多く集まる場所では、ワクチンパスポートが必要になる。

エジンバラ大学で疫学を専門とするローランド・カオ氏は「スコットランドはイングランドと政府の方針が若干異なり、マスク着用のレベルも少し違うということが確認されている。この点が(スコットランドの感染減少に)影響しているのかもしれない」と話した。

(Alistair Smout記者)

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ビジネス

アングル:米通信事業者の5G対応、「看板倒れ」の現

ビジネス

中国恒大会長、10年以内に新エネルギー車を主要事業

ビジネス

米上院財政委員長、富裕層向け所得税を提案

ビジネス

中国国家主席、石炭・電力の安定供給図ると表明=国営

MAGAZINE

特集:世界に学ぶ至高の文章術

2021年10月26日号(10/19発売)

ビジネスの現場でも「よい文書」は不可欠── 世界の共通するライティングの基礎とは

人気ランキング

  • 1

    カモメを水中に引きずり込むカワウソの衝撃映像

  • 2

    インドネシア、バド国際大会19年ぶり優勝でも国旗掲揚されぬ屈辱 その理由とは──

  • 3

    ヴィンランド・サガ? ヴァイキングがコロンブスより約500年早くアメリカ大陸に到達していた

  • 4

    イギリス人から見た日本のプリンセスの「追放劇」

  • 5

    ヒトに脳炎起こす、20センチの巨大カタツムリ 10年…

  • 6

    閲覧ご注意:ヘビを捕食するクモが世界中で確認され…

  • 7

    「自分たちらしく、時代に合ったものを」デュラン・…

  • 8

    日本のコロナ感染者数の急減は「驚くべき成功例」─英…

  • 9

    ピアニスト辻󠄀井伸行さんインタビュー…

  • 10

    映画『アメリカン・スナイパー』のネイビー・シール…

  • 1

    銀河系の中心方向から謎の電波源が検出される

  • 2

    カモメを水中に引きずり込むカワウソの衝撃映像

  • 3

    イギリス人から見た日本のプリンセスの「追放劇」

  • 4

    インドネシア、バド国際大会19年ぶり優勝でも国旗掲揚…

  • 5

    日本のコロナ感染者数の急減は「驚くべき成功例」─英…

  • 6

    岸田首相はDappi疑惑を放置して衆院選を戦うのか

  • 7

    世界一白い塗料がギネス認定 98%の太陽光を反射、…

  • 8

    ピアニスト辻󠄀井伸行さんインタビュー…

  • 9

    ヴィンランド・サガ? ヴァイキングがコロンブスよ…

  • 10

    地面に信号! 斜め上を行く韓国の「スマホゾンビ」…

  • 1

    薄すぎる生地で体が透ける! カイリー・ジェンナーの水着ブランドが炎上

  • 2

    中国バブルは崩壊する、だがそれは日本人が思うバブル崩壊ではない

  • 3

    イギリス人から見た日本のプリンセスの「追放劇」

  • 4

    中国製スマホ「早急に処分を」リトアニアが重大なリ…

  • 5

    イチャモン韓国に、ジョークでやり返す

  • 6

    銀河系の中心方向から謎の電波源が検出される

  • 7

    【独占インタビュー】マドン監督が語る大谷翔平「や…

  • 8

    アイドルの中国進出が活発だったが、もう中国からは…

  • 9

    地球はこの20年で、薄暗い星になってきていた──太陽…

  • 10

    なぜ中台の緊張はここまで強まったのか? 台湾情勢を…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中