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平野美紀|オーストラリア

森林火災、干ばつ、熱波・・環境激変でコアラの3分の1が死亡、絶滅危惧種に?

環境の激変で生息地が縮小し、個体数減少による絶滅が危惧されるコアラ。(Credit:Windzepher-iStock)

凄まじい勢いで燃え上がる炎の森から這い出し、よろめきながら火の中をさまようコアラ。咄嗟に着ていた服を脱いでコアラをくるむための布代わりにし、救出に向かう女性と鳴き叫ぶコアラの映像は、世界に衝撃を与えた。

オーストラリア南東部で、2019年8月頃から2020年3月まで続いた大規模な森林火災によって、おびただしい数のコアラが犠牲になった。

犠牲になったのは、もちろんコアラだけではないが、世界的にオーストラリアの顔となっている「コアラ」の痛々しい姿が人々の関心をひき、大きく報道されたことがきっかけとなって、オーストラリアの大規模森林火災に注目が集まったのは間違いないだろう。

そんな、オーストラリアを象徴する動物である「コアラ」が、近年の森林火災や干ばつ、熱波などにより、この3年間で生息数の約3分の1が失われたという、悲しい調査結果が発表された。

コアラの個体数が激減

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火災現場から救出されて、手当てを受けるコアラ。火傷だけでなく、煙を吸い込んで肺炎を起こしている個体も多かった。(Credit:E4C-iStock)

9月20日、コアラの保全活動をしているオーストラリア・コアラ財団は、野生のコアラに関する最新の調査結果を公表した。(参照

30年に渡って野生コアラの生息地を調査してきた同財団によると、豪国内の野生コアラの総個体数は、現在、約32,000〜58,000頭と推定され、これは、2018年調査から30%減少となり、深刻な個体数減少傾向にあるという。

今回の調査で、全国的に個体数が減少していることがわかったが、なかでも、森林火災が240日間以上続き、被害が甚大だったニューサウスウェールズ州は、州内でもコアラ密度の高い北部地域の被災が深刻だったため、犠牲になったコアラの数も多く、過去3年間で41%以上減少と、減少傾向はさらに顕著だ。

オーストラリアといえども、どこにでもコアラが生息しているわけではなく、森林火災被災地が主に大陸南東部の生息域に集中していたのが、コアラにとっては不運だった。

また、今回、調査が行われた151のコアラ生息地のうち、5.000頭以上の生息が確認されたのはわずか1地区のみであったばかりでなく、1頭も確認されない地区が47にのぼった。(参照

このままでは、最も事態が深刻なニューサウスウェールズ州の野生のコアラは、2050年までに絶滅する恐れがあるという。(参照

環境の激変と土地開発で危機に追い込まれるコアラ

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コアラの生息地を壊滅状態に追いやった2019-2020年の森林火災。クイーンズランド州南部の火災現場。(Credit:philips-iStock)

絶望的とも思えるコアラ個体数減少の最大の要因が、2019-2020年の大規模森林火災被災であったことは、誰もが認めるところだろう。

それ以外の要因としては、コアラ自身が抱える病気の問題を除けば、土地開発などによる森林伐採でコアラの生息地が狭められてきたことや、生息地環境の激変によるところも大きい。

あのように大規模で過酷な森林火災となったのは、それ以前に何年も続いた干ばつや熱波が大きな要因のひとつなのだ。とくに内陸部では、過去10年間に渡って雨がほとんど降らず、森が枯れていった。そして、乾燥した森に頻繁に落雷が起き、火災が発生するという最悪の環境になっていた。

コアラは、先住民の言葉で「水を飲まない」という意味だとされるが、実際は、たくさんではないが水を飲むし、コアラが好んで餌とするユーカリは湿地帯や川岸のような水分量の多い土地に多い。つまり、干ばつが続いた状況によって、コアラにとっては、生きるための飲み水も餌となるユーカリも不足してきたといえる。

オーストラリア・コアラ財団長のデボラ・タバート氏は、ロイターのインタビューに次のように語った。(参照

「ニューサウスウェールズ州西部などでは、過去10年もの干ばつによる累積的な影響で、河川が干上がり、コアラの生命線となるリバー・ガム(ユーカリの1種)が枯れてしまったのが大きな懸念です」

今後、増加すると予測される激しい森林火災とコアラの未来

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2019-2020年の森林火災では、おびただしい数の動物たちが犠牲になった。焼けた森で餌を探すカンガルーの姿も...(Credit:lindsay_imagery-iStock)

コアラを代表とするオーストラリア大陸の生き物たちは、劇的に変化する気候によって引き起こされる環境の変化にさらされてきた。

専門家によると、2019-2020年の森林火災では、コアラなど約1億4,300万もの哺乳類を含む、約30億もの生き物が死亡、または、棲みかを替えざるをえなくなったという。また、ここ数十年で激しい火災が発生する確率は高まっており、あの地獄のような火災を引き起こした異常な暑さは、気候変動の影響で2倍になっている可能性があると警鐘を鳴らす。(参照

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)によると、1950年代以降、豪国内大半の地域において、火災を引き起こす極端な気象現象の発生や火災シーズンが長くなるケースが増加。2019年は、1900年に記録を開始して以来、最も乾燥した年であったことに加え、最も気温の高い年となり、この年の年間平均気温は、過去の平均を1.52℃上回ったと指摘する。こうした、気候変動の影響により、火災シーズンがより長く、より激しくなり、森林火災危険度指数(FFDI)の平均値があがっているそうだ。(参照

極端な気象によって嵐の発生も増えており、火災の原因となる落雷が頻繁に起きるのも脅威だ。こうした、気候の変化による影響に加え、宅地開発や道路拡張などによる土地開発が、野生動物たちの生息地を破壊している。

さまざまな脅威にさらされるコアラを保護するために、「今、行動を起こすことが急務だ」と、コアラ財団のタバート氏は声を挙げる。

オーストラリア政府は、ニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州、キャンベラ周辺の「森林火災からの復興計画」の一環として、絶滅が危惧される種としてのコアラの保護状況ステイタスを「脆弱」から「絶滅危惧種」に引き上げるべきかどうかについてのパブリックコメントを6月から開始。10月30日までには、専門家パネルが連邦政府の環境大臣に最終的なアドバイスを行う予定だ。(参照

コアラを、地球上の生き物たちを未来へと繋いでいくために、今、私たちにできることが問われている。〈了〉

【備考】2019-2020年の大規模森林火災の経緯は、以下のツイートのリンク先記事にまとめてありますので、ご興味のある方はご一読ください。

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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