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森田早紀|オランダ

EUオーガニックの上をいく、オランダのEKO認定

(筆者撮影 2021年5月 EUオーガニックラベルとEKOラベルがついた苗。野菜や乳製品に限らず、苗や種、加工食品にもこれらのマークが見られる)

EU(ヨーロッパ連合)オーガニック認定が施行された際、オランダで1985年から親しまれてきたEKO認定は自分が何者なのか、見失ってしまった。2010年の出来事。

その後、自己申告式や企業独自の「エコラベル」がぴょこぴょこ生まれ、エコラベル・エコ認定業界は混乱を極めている。

そんな中近年、EKO認定が居場所を取り戻しつつある。

今回の記事では、EKO認定の歴史とEUオーガニックとの違いを紹介する。オランダのオーガニック認証事情に興味がある方、オランダで買い物をする機会のある在住者や旅行者の方で選択基準に迷っている方の参考になれば幸いだ。

認証機関・制度とその歴史

まずはEUとオランダのオーガニック認証制度の歴史を時系列に沿って見てみよう。

元々はEUで「オーガニック」が定められる以前に、1985年からオランダで使われていたEKOラベル。

1987年に、EKOラベルを管理する組織として、SKAL(Stichting Keur Alternatief Landbouwproducten・直訳すると代替農作物選択機構)が発足した。

1991年にEUがオーガニック農法の規則No 2092/91を定め、1992年にオランダでも施行。SKALはSkal-Biocontroleに改名し、国の農業・自然・食品安全省に認められた機関としてオーガニック検査・認証を担うことになった。

ちなみに、EUの規則をもとに各加盟国はオーガニック認証機関を設立・認定しているが、国によっては複数存在する。例えばフランスには11、オーストリアには9、ドイツには18ある。そんな中オランダではSkal-Biocontroleが唯一の機関だ。

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(筆者撮影 2021年5月 左下に、EUオーガニックラベルと、フランスのオーガニック認証機関のうちの一つ、AB Franceによるオーガニックラベルが付いている)

2007年、EUは「オーガニック」に関する決まり事を規則No 834/2007で定め、これが1991年の規則に取って代わった。

2010年にはEUのオーガニックラベルが導入された。黄緑色の旗に葉っぱが描かれた、あのロゴだ。このEUオーガニックラベルは、それまでオランダでEKOラベルが担ってきた役割を取って代わった。

2012年にStichting EKO Keurmerk(EKOラベル機構)が設立され、Skal-Biocontroleにオーガニック認定を受けた。ここからEKOラベルは生まれ変わり、EUオーガニックよりさらに上をいく農作物・食品に付与されることになった。認証基準は元々、改善努力リストの中からいくつかの項目を取り入れることだった。しかし昨年から今年にかけて制度が確立されてきて、数値や最低基準が定められるようになった。

EUオーガニックとオランダEKO認定の中身の違い

オランダEKO認定がEUオーガニックの上をいく、とはどういうことか。まずEUオーガニック認定は、技術面に着目している

例えば、定められた農業資材(肥料・農薬・培地等)以外を使わないこと、病害虫対策は物理的・生物的防除(マルチ、草刈り、天敵、水はけの確保)を優先すること。畜産業に関していうと、エサの種類・抗生物質の使用・単位面積当たりの家畜の数・牧草地へのアクセスなど。

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(筆者撮影 2021年4月 ブロッコリーの苗の間を機械で除草している様子。まだ雑草が発芽しないうちに、土の中から掘り起こしてしまい、乾燥・覆土で枯らす。物理的防除の一種)

対して、オランダのEKO認定はEUオーガニック認定にプラスαして次のような取り組みをしている生産者・加工流通業者・小売店が受けられる。

まず、 農業経営体の全体がオーガニック認定されていなければならない。つまり、農家及び農業生産法人の土地や生産物の一部は慣行、一部はオーガニックという場合は受け入れられない。

そして各業界にEUオーガニックで定められたものよりも細かい条件がある。例えば露地栽培の場合は、次のような決まりだ:

根菜は土地の最大50%まで (土を掘り起こすと、土壌の生態系や物理的構造を壊してしまうため)

土地の最低30%は休閑地として、クローバー・トウモロコシ以外の穀物・アルファルファ・その他緑肥を育てること

土地の最低5%は自然・景観保全のために用いること

持続可能な電力源を用いること

消費者へのコミュニケーション手段として以下のうち最低一つを行うこと
 >ウェブサイトの設置
 >最低一年に一度、一般公開日
 >直販
 >学校や企業などからの見学の受け入れ

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(筆者撮影 2021年5月 農園の敷地内にあるお店。ここで採れた野菜の他に、野菜・果物・動物性食品・瓶詰め・お菓子等を仕入れて売っている。品揃えは豊富だが、一番売れているのはやはり野菜だそうだ)

EKOラベル機構は、2030年までに農地の25%をオーガニックにするというEUが掲げる目標に貢献すること(現状はEU27か国平均で8.7%。対してオランダは3.2%と先は長い)、さらにこの目標に伴うオーガニック市場の拡大を、EKO認定者が最大限に活用できるように支援することを大切にしている。

ちなみにこのオーガニック農地面積の目標は、2019年12月に発表された欧州グリーンディールという成長戦略のうち、Farm to Fork戦略(農場から食卓)で掲げられているもの。三本建ての柱に基づいている:
1)消費の喚起
2)生産の増加
3)オーガニック業界の持続可能性をさらに向上

※Farm to Fork戦略(畑から食卓・戦略)について詳しく知りたい場合は、こちらの動画も参考にして頂きたい↓↓

持続可能性は最終目的地ではなく、発展の道だ、というのがEKOラベル機構の主張である。「持続可能」な社会が達成されることはなく、社会は常に持続可能性を増していくことができる、という考え方だと私は捉えた。

単にオーガニック農業を営むだけでなく、買い手にもその価値をわかってもらい、買ってもらうように努力をすることもEKO認定の特徴だ。EUオーガニック認定が(2)(3)の生産側に特化しているのに対し、オランダのEKO認定は(1)と(3)の消費側にも着目していると言えるだろう。

最後に

まとめると、オランダではもともとEKOラベルがオーガニックラベルとして使われていたが、2010年に新たにできたEUオーガニックラベルに取って代わられた。そこでEUオーガニックの基準よりもさらに努力している農業経営体はEKO認定を受けられる、という位置づけに変わった。EKO認定は生産技術だけでなく、買い手へのコミュニケーションや 全体の持続可能性も重視している。細かな決まりができたのはほんの最近のことだ。

単に、オーガニック食品には需要があり、今流行っているから、という理由ではなく、オーガニックな生産・消費に私たちの生活を変えていかないと人間は地球で生きていけない、という考えが表れているのがEKO認定のような気がする。強い信念が貫かれているのだろう。

今回はEUオーガニックとオランダのEKO認定に焦点を当てて解説したが、いわゆる「エコ」ラベルはそれだけに限られない。むしろ、これら二つは氷山の一角に過ぎない。溢れる「エコ」ラベル、オランダにはどのようなものがあるのかの紹介や、オランダでオーガニックとEKO認定を受けた農家さんへの取材の様子は、次回以降の記事に書こうと思う。

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(筆者撮影 2021年4月 野菜だけでなく、果樹も数十本植わっているEKO認定を受けた農園。こちらはりんごの花)

参考資料:文中にリンクを挿入済み。2021年5月9日参照

 

Profile

著者プロフィール
森田早紀

高校時代に農と食の世界に心を奪われ、トマト嫌いなくせにトマト農家でのバイトを二度経験。地元埼玉の高校を卒業後、日本にとどまってもつまらないとオランダへ。農業応用科学大学の4年生。卒業後は地元で百姓になり、楽しく優しい社会を、農を軸に築きたい!オランダで生活する中、感じていることをつづります。

Instagram: seedsoilsoul
YouTube: seedsoilsoul

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